前置きその3
「あァ? てめえどこカバよ?」
「ギョロ〜!」
役に立つのか疑問なイロモノたちが何やら交流しているさまを前に、レギュラートリオは喧々諤々の議論を交わしていた。
「ほほう、なかなかいい面構えの青年じゃないか。ギョロちゃんをいやらしい目で見ているのは許し難いが、カバライトウォリアーの第二部隊が仲間になってくれるのなら戦術に幅ができそうだな、ギョロちゃんをいやらしい目で見ているのは許し難いが!」
「ねーから! いろんな意味でねーから!」
「というか、ちゃんとお世話できるんですかー? 生き物を飼うのは大変ですよー?」
「できるもん! ちゃんと散歩にも連れてくもん! 毎日行くもん!!」
「どこん家の子供も最初はみんなそう言うんだよなぁオイ……」
「ぶぅ!!」
「つーかマジ使いモンになんのかこいつら。俺はもっとこう、さぁ! マトモな戦力が欲しいんだが!」
胸板兄貴がフラグを立てた瞬間、
――風が。
わずかに動いた。
「っ!?」
胸板兄貴と女獄長は弾かれたように振りかえった。
果たして、いつからそこにいたのか――面接室の席に、一人の男が腰かけている。
「お、思い出しましたよー。今日はもうひと組面接に来てたんですー」
「こいつ……ヤベぇレベルだぞ……」
二人の肌に、鳥肌と冷や汗が浮き出ていた。
そう、途轍もない手練である。気配とは、単体では無意味な身体感覚の総合である。その気配すらもまったく感知できなかったということは――こちらのあらゆる認識をかいくぐるだけの精妙極まる歩法と、わずかな呼吸すらも悟らせない完璧な体内制御。そのどちらもが極めて高レベルで実現されているということ。
凄腕、などという言葉でくくることすら失礼にあたるレベルの武人であった。
こちらの動揺を知ってか知らずか、男はかしこまった様子で重々しく口を開いた。
「大盛りねぎだく、ギョクで」
「どいつもこいつもここを何だと思ってんだ!!」
「だからカツ丼出せっつってんだろうがァァァァァッッ!!」
「てめーは黙ってろ!!」
しょうがないので食わせてやることにした女獄長であった。
「本当に出てくるとは……やはり天才か……」
「どーいたしましてー」
「で? アンタは何者なんだ?」
「そこに思い当たるとは、相当な実力者だな……」
「面接に来たのか? 入りたいのか?」
「鋭く本質を突く質問……大した奴だ……」
「うぜーよこいつ!! 会話が成立しねえー!!」
「えーっと、とりあえずアレだ、インキュバスだからQBくんと名付けようか。ね、いいよね?」
「わけがわからないよ」
「そこは反応するんだ!?」
――ともかく、QBくんとその兄弟たちが仲間になった!!
銀河有数の精鋭剣士集団だ!!
つづく!!