螺旋のモノリス~京都湯けむり殺人神父ラヴィニ―のドキ☆釘付け魅惑大胸筋~

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ケイネス先生の聖杯戦争第四十五局面

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 「解せんな……」口の端から血を滴らせながら、アーチャーは呟く。「貴様のその戦意は何だ。騎士道だと? そのような、誰かから与えられた規範で、そこまで全霊を振り絞れるものか? 貴様のマスターはそれほどの男だと?」二騎の英霊は宙を落下しながら、ぽつぽつと言葉を交わす。「無論だ。ケイネスどのは俺がこの身と魂のすべてを賭して仕えるに値する御方だ」「ますますわからんな。騎士(イヌ)がしっぽを振るのは本能であろうが。だが雑種、貴様の眼には愉悦があったぞ。心底からこの戦いを愉しみ、悦んでいた。責務以外の何かがあった」「それは……」言いよどむ。かつて一人の女を愛した。その女は、ディルムッドのホクロに魅了されていただけであった。しかし――きっかけが何であれ、彼女との間に培われた絆は、その愛は、最後には真実のものとなっていた。人と人の縁は、どのような始まり方であろうとも本物たりうるのだと、今では誇りをもって断言できた。「我が今生の主のために命を懸け、血を流して戦うのは、愉快だった。俺にとって騎士道とは義務であると同時に、救いなのだ」マスターに従うのは、最初はただの責務だった。だが、ケイネスと付き合ううちに、魔術師という人種の醜さとひたむきさを徐々に理解していった。ディルムッドがこの悟りに至ったのは、やはりランスロットという奇妙な友との魂の交流があったことが大きかった。魔術師を理解する前段階として、より心理的な落差の少ない、しかし決定的に自分とは異なる他者と触れ合えたこと。それ自体がこの危うい主従関係に良い影響を与えたであろうことは明白だった。「英雄王、ただひとりの絶対者よ。お前にはわからんよ、仕えるということの中にも、救いと絆はありうるのだ。征服王の覇軍がそうであったように」「で、あるか」ギルガメッシュは、胸の霊核を貫くゲイボウを眺め、徐々に光の粒子へと分解されてゆきながら、奇妙な苦笑を浮かべた。道化の難解な痴れ事を前にした時のような、呆れとも困惑とも嘲りともつかぬ感情の発露だった。やがて最も神に近い英雄らしく、厳かな威厳に満ちた貌でディルムッドを見やり、言った。「忠道、大義である。その在り方、ゆめ忘れるな」「言われるまでもないこと」あくまで生真面目な槍兵を鼻で笑い、最強の英霊は溶けるように消えていった。