螺旋のモノリス~京都湯けむり殺人神父ラヴィニ―のドキ☆釘付け魅惑大胸筋~

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ケイネス先生の聖杯戦争第五十九局面

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 ――ランサーの敗因は、無意識のうちに黒泥人形たちを通常のサーヴァントと同じように考えていた点である。霊核を貫かれれば大人しく消え去るだろう――などと愚かな楽観をしていたのだ。黒アサシンは、その瞬間に炸裂。暗黒の汚泥となってディルムッドに付着した。即座に始まる悪性汚染に、絶叫を上げる。蝕まれてゆく正気。育まれてゆく憎悪。歯を食いしばって抗おうとするが、同時に飛来した黒キャスターの攻撃呪文が着弾。抗魔力Bを持つランサーであれば、本来ならば何ら脅威ではないのだが――呪文に汚染作用が乗っていた。刻一刻と削り取られてゆく正気。そこへ黒ライダーと黒アーチャーが斬りかかってくる。「ぐぅ……ッ」無様に地を転がって逃れるディルムッドに、汚染呪文が次々と着弾。魔貌の騎士の最も根源的な誇りを奪い去っていった。「貴様ら……」濁った声で、憎悪を吐き出す。「殺してやる」突進。奴らは明らかに宝具を持っていない。それは英霊のアイデンティティそのものであり、さしものアンリマユもこの急場では再現できなかったのだ。基礎能力値とスキルのみの模造に留まっている。そして――セイバーを除く四騎はいずれも戦力のほとんどを宝具に依存している連中であり、たとえ四人がかりであろうがディルムッドの敵ではないのだ。ただ回っているだけの無様な模造乖離剣を弾き飛ばし、返す槍で黒アーチャーの霊核を撃ち抜く。弾けた黒泥を浴びる。憎悪のままにゲイボウを引き抜きざまに石突で黒ライダーの鳩尾を突き、反動を利用して黄槍を投擲。さっきからクソうっとおしい黒キャスターの霊核を貫く。そして獣のような絶叫を上げて、黒ライダーに殴り掛かる。一打で頬骨を砕き、二打で肋骨を粉砕。頭突きを叩き込んで仰向けに倒すと、その巨体に馬乗りになった。血塗れになった両拳を狂ったように乱打。そして折れた骨が露出した指先で胸郭をこじ開け、ずるりと霊核を引きずり出す。ゲタゲタと哄笑を上げながら、それを握りつぶした。もはや騎士の誇りなどどこにもなかった。凶獣がそこに現れていた。ついに泥の汚染はランサーという存在そのものを融解してしまったのだ。ゲイボウは、もはや高潔なる自らの担い手がこの世に存在しないことを悟ったのか、粒子となって分解されていった。ゲラゲラと笑う狂鬼だけが後に残った。