螺旋のモノリス~京都湯けむり殺人神父ラヴィニ―のドキ☆釘付け魅惑大胸筋~

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ケイネス先生の聖杯戦争第六十一局面

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 そもそもからして無理のある状態だったのだ。契約のパスを通じて、ケイネス先生と雁夜おじさんは自らのサーヴァントの状態をある程度把握できていた。悪性汚染が一定のレベルを超えた段階で、令呪による加護を継ぎ足していったのだ。だが――ランスロットの理性を取り戻させるために、雁夜おじさんはすでに三画消費していた。そして今、最後の六画目をも使ってしまった。もはやランスロットを守るものなど何もなく、黒化待ったなしの状況となっていた。「ここまでか……」鍾乳洞内部で何があったのかはわからないが、どうやら失敗らしい。言葉を交わす機会すらなかったが、自らのサーヴァントとの絆が完全に断たれた瞬間、雁夜おじさんは無念に歯噛みした。世界は終わる。この世すべての悪によって。ケイネス先生はあと三画ばかり令呪を残していたが、対人宝具しかもたぬランサーにこの状況をどうにかできるとも思えなかった。「……聖杯の泥は、サーヴァントの在り方を歪め、惨劇を振りまく存在へと作り替える」唐突に語り始めるケイネス先生に、雁夜おじさんと舞弥はんは怪訝そうな顔をする。「こんな時に何を言っている。世界が終わるんだぞ」「いや、なに、暇なので解説でもしておこうかと思ってな」「はあ?」一切取り合わず、先生は言葉をつづける。「しかしそもそもサーヴァントとは、英霊をクラスという型にはめ込むことで成り立っている存在である。その魂を作り替えようというのであれば、まずクラスという外装を破壊しなくてはならない」落ち着き払って語りつづける。「そして命令を強制する機能を持つ令呪は、外装ではなくその中身に直結した魔術システムであり、契約のパスが絶たれるのは悪性汚染の最終段階となる。そして抗魔力スキルを持つディルムッドは、ランスロットよりも最終段階に至るのが遅い」「だから、何なんだ?」「私は待っているのだよ」「何を」「外装が溶解し、しかし契約のパスはまだ生きている瞬間を、だ。それまで暇なのでな、まぁもう少し聞いていけ」皮肉気な笑みを浮かべるケイネス先生。「ランスロットを正気にして対軍宝具を取り戻させ、これをもって大聖杯を破壊するプランが成功していたならば、何もこんな大博打を打つ必要はなかったのだが――やれやれ、冬木の地は鬼門だな。最後の奥の手まで引きずり出されるとは」「さっきから何を言っているんだ!」「勝利宣言だよ」「!?」「そら、今だ。クラスが完全に溶解した」やおら令呪の宿った腕を掲げ、ケイネス先生は厳かに口を開けた。「令呪をもって我が従僕に命じる――」