螺旋のモノリス~京都湯けむり殺人神父ラヴィニ―のドキ☆釘付け魅惑大胸筋~

小説書きでミニチュアゲーマーが何の生産性もない無益なことばかり延々とくっちゃべってるブログ

肩が痛い! 坊やだから!

「色彩豊かな幻想的世界」
(『ハイペリオン』&『ハイペリオンの没落』/ダン・シモンズ
辺境の惑星ハイペリオンには、遥かな未来から時間を逆行して存在しつづける遺跡群〈時間の墓標〉がある。そこでは生物とも機械ともつかぬ体を持つ殺戮の神〈シュライク〉が封ぜられており、たまにやってくる巡礼者の願いをかなえたり、はたまた殺したりしている。物語の主人公である七人の巡礼者たちは、それぞれの願いと思惑を抱えながら、〈時間の墓標〉への旅を開始する。ジャンルとしてはSFになるが、その雰囲気はむしろファンタジーに近い。惑星ハイペリオンの壮大で幻想的な自然描写は息をのむほど美しく、無数にちりばめられた謎と伏線は奇譚への期待を神秘的にかきたてる。前半部分では、七人の主人公たちがシュライク巡礼に参加するに至ったいきさつが六篇の短編として語られる。冒険旅行記や戦記、ホラー、サイバーパンク、ハードボイルド、時間SF、悲恋もの、バトルもの、宗教ものなど、多彩なジャンルの物語を野放図に放り込んでいながら破綻することもなくまとめ、後半部分への伏線としつつ特有の世界設定を読者に浸透させている。ハイペリオンにまつわる数奇で不条理な運命に翻弄され、さまざまな欠落と渇望を胸に旅をつづける彼らは、やがてたどり着く〈時間の墓標〉でおのおのの運命と対峙する。後半部分では巡礼者たちの願いの顛末のみならず、人類社会全体を脅かす存在との銀河規模での戦いまでもが並行して描かれるようになり、物語のスケールは一気に膨らんでゆく。一見関連のなさそうなふたつの事柄は、めぐりにめぐった因縁に導かれ、次第に絡み合ってゆくのだ。読み終えて何よりも痛切に感じたのは、「疲れた」ということ。本当に長かった。また、翻訳ものの常として微妙に文章が読みづらいのも疲れに拍車をかける。だが、あらゆる娯楽小説の面白みを大盛で出してくれた作者の筆力には驚嘆した。いくつも登場する諸勢力がどれも重要性を保ちつつそれぞれの思惑で動いている状況が大変ツボだ。