螺旋のモノリス~京都湯けむり殺人神父ラヴィニ―のドキ☆釘付け魅惑大胸筋~

小説書きでミニチュアゲーマーが何の生産性もない無益なことばかり延々とくっちゃべってるブログ

四巻の表紙は超絶カッコイイ

「男なら天下狙え、天下」
(聖刻群狼伝1〜4/千葉暁)
最初、このシリーズの第一巻の第一話を読んだとき抱いた感想が「なんだか凡庸な作品だなぁ」というものだった。〈操兵〉と呼ばれる巨大ロボが軍事の中核を成す剣と魔法のファンタジー世界で、うだつの上がらない貧乏小国の第二公子が野望を抱いて奮闘する話である。特に眼を引くような斬新な要素は見当たらなかった。失望しながらも、せっかく買ったんだし、と思って読み進めてゆくうちに、だんだんと面白さが滲み出てきたのである。そして一巻を読み終えた段階で、評価を多少改めた。その後二巻三巻と読み進めてゆくうちにさらに評価は高まり、最終巻を読み終えたときにはもはやファンになっていたと言っても過言ではない。なぜ面白いと思うようになってきたのか。特筆すべき理由はない。ただ単に先の展開が気になりだしたのである。登場人物の動機なり心情なり描き、伏線を張り、謎を散りばめる。別に何も特別なことはせず、確実なことを積み重ねてストーリーへの求心力を出しているのである。そしてこの『群狼伝』、実は大きな物語の序章のようなものであり、主要キャラクターの顔見せとか状況の示唆が主な目的なのだが、最終巻読了時の続編への期待感がもうスゴイことになる。私は読み終わった瞬間本屋に直行していた。具体的には今まで抑圧されまくっていた状況が解放され、主人公は力を手に入れ、「よっしゃぁー! 天下獲ったるでぇー!」というようなあたりで終わるのである。いや燃えた。しかし微妙に気になるのが、主人公の不自然なまでのモテモテぶりである。そもそも私は「柔弱でヘタレで優しさ以外何も長所がない主人公が複数の女の子に好かれて振り回される」とかそういう感じの話が控えめに言って嫌いなので、読んでて「えぇーっ」と思ったものなのだが、まぁ、それ以外の部分が非常に逸品だし、全体としてはかなり硬派な雰囲気だし、帳消しということでここについてはあまりとやかく言うまいかなぁ、と。