スピードの魂が覚醒する。
「おっかしぃなぁー、俺は好きなんだけどなぁー」
(閃光のガンブレイヴ ゼロから始めよ/椎葉周)
凄腕銃使いコンビがダキャダキャ撃ったりバカスカ格闘したりする話。なんかネット界隈を見ていると「微妙……」という評価ばっかなので意固地になって大プッシュしてみる。……いや、そんなことは関係なくおもしろいよこれは! まぁ色々欠点はある。なんというか、戦闘シーン。個々の動作を漫然と並列させているきらいがある。もっと緩急ほしいなぁと思う。それにキャラクター。特に敵組織の幹部たち。七人もいる必要が感じられない。いや、いてもいいけど、たった一冊のうちに全員登場させ、あまつさえ全滅させることはないと思う。普通に数が多い上に差別化があまりできていないので、誰が誰だか把握しずらい。……とまぁ言ってみたものの、作品全体としては良い部分のほうがずっと印象に残っている。まず、細かい言い回しの数々がカッコよく決まている。すくなくとも私はかなり参考にした。それに、ギャグがなんかおもしろい。私自身にとっても実に意外なことに、ラノベで一番笑った作品はこれではなかったかなと思う。あと、主役コンビは普通にカッコイイ。強く優しく、普段は間が抜けているけれどキメるときはビシッとキメる。そして精神的にとても大人だと思う。ひどいいじめを受けている少年に乞われて格闘術を教えるシーンがあるのだが、教示を通じて主人公はむしろ、逃げることを恥だと思い込んで窮々としている少年の心を融かそうとしていた。「戦う力ではなく、その余裕が彼を救う」。なるほどなぁ……と感銘を受けたものだ。極力荒事を起こさず、スマートな事態の収拾に努め、しかしどうしようもなくなったら即座に戦う覚悟ができる。私もそういう人間になりたいものだなぁ。これは良いところとも悪いところとも断じがたいのだが、いわゆる萌えキャラは登場せず、恋愛要素も爪の先ほどしかないのも正解だと思う。そういうのも嫌いではないが、ちょっと供給過多だなぁと私の個人的嗜好が常々言っているので。