螺旋のモノリス~京都湯けむり殺人神父ラヴィニ―のドキ☆釘付け魅惑大胸筋~

小説書きでミニチュアゲーマーが何の生産性もない無益なことばかり延々とくっちゃべってるブログ

童話的冷酷狂気触手幻想鬱風味物語

 ふいに、『パルムの樹』というアニメ映画をまた見たくなった。この作品は一年くらい前に視聴したのだけど、可愛らしいデザインのキャラクターたちが不可思議で幻想的な異世界を旅するという話である。
 こう書くと物凄くほのぼのとした物語を想像してしまうが、実際はかなりとんでもない。
 登場人物たちが冷たい、利己的、卑怯。しかも単に性根がひん曲がっているだけでなく、それを自覚していない。さまざまな意味で子供である。しかもそういう汚さが何か劇的な演出とともに現れるのではなく、ごく当たり前の何でもないことのように描かれているのだ。かなり気分が悪い。
 主人公のパルムは輪をかけてヒドい。前半は単なる気狂いだったが、後半になるとややマトモになった代わりに性格が悪くなる。本当にどうしようもない。というか彼の狂いっぷりは真剣に怖い。
 次々と起こる鬱イベントも、ただただ不快なだけで、物語における意味が感じられない。
 しかもキャラクターたちの心理の転換がやたら唐突で、必然性などないように思える。
 とどめに、短時間でいろんな要素を詰め込みすぎである。一見しただけでは話が理解しにくい。
 なんかもう、「見た目とドラマのギャップが鮮烈なだけで、かなりの駄作」とか評されても仕方のない出来である。
 しかし、それでも私はこの作品が大好きだ。
 異世界情緒ただようエキゾチックな光景が非常にリキ入れて描写されており、そういうのが大好きな人間としては実に心躍る世界である。美しい。ひじょーーに美しい。もうそれだけで大満足。あと、エンディングも逸品。主人公のなれの果てが映し出される流麗で物悲しい情景を背景に、スタッフロールと透明な主題歌が流れるあのラスト。今までのさまざまな不満を洗い流して強引に感動させる力があると思う。
 要するに、なんか絵が綺麗でラストに感動的な歌でも流れりゃそれでいいじゃない! ということが言いたいのである。
 いいじゃない!
 人間ドラマとかどうでもいいじゃない!
 ねぇ、みんなそう思うよね?
 ねえ!
 こたえてよ!
 ねえ!!