前置きその1
陰謀団〈網膜の恍惚〉も、一応、新規団員を募集していたりする。
少しでもまともな人材がいてくれないと胸板兄貴の胃が蓮コラみたいなことになるので、けっこう真剣に新たな仲間を募っているのだ。
耽美にして残虐なるヴァトハールの邸宅にて、入団希望者との面接が行われていた。
左「えー、それではまず当社を受験された動機などを伺いましょうかー」
「シャブくれよ」
左「採用」
右「なんでだよ!!」
左「ここでウチの陰謀団をヨイショするような人なんて信用できません><」
右「わかるけど! その気持ちはすごくわかるけどちょっと待てよ!! シャブってお前、ジャンキーじゃねえかよ明らかに! よく見りゃ挙動がラリってるよ! 首も据わってねえし!!」
確かに、姿勢がフラフラと安定せず、キョロキョロと落ち着きもなく、時たま意味もなく忍び笑いを浮かべたりする。典型的な薬物中毒の症状であった。
そのとき、ジャンキーの男はくけけ、と喉が詰まったような笑いを上げ、嘲るように言った。
「……シケてんなぁ、オイ」
右「ああん?」
「この取調室はカツ丼も出ねえのかよ。マジ終わってんな」
右「何しにきたんだお前」
左「明らかに現状が認識できてませんねー。たぶん過去の記憶が彼の周囲を取り巻いているんですよー。ダメですよ薬物とは上手に付き合わないとー。ガラポンじゃなくてパケがおすすめですー」
右「やめろそのリアルなアドバイス!」
上「だから俺はやってねえっつってんだろうがァァァァァッッ!!」
右「わー暴れ出したー!」
左「つーかこんなときにヴァトハールの野郎はどこいったんだ!!」
右「あー、なんか散歩とか言ってましたよー」
怒号と打撃音と埃が室内を満たした。
数分後、ようやく取り押さえた時には、二人とも生傷だらけになっていた。
「ぜえぜえ……意外に、やるじゃねーか」
「明らかにただのジャンキーの戦闘技術じゃありませんねー。これは案外拾いものかもしれませんよー」
「いやねーから! どう考えても言うこと聞かねえよコイツ!」
「大丈夫ですよー、わたしの妹(ウィッチ)たちも最初はみんなこんなんでしたからー」
「うわー、聞きたくなかったそんな情報!」
――そんなわけでチェーン兄貴とその舎弟たち(住所不定未塗装)が仲間になった!!
「つーかナイフしまえや!」
「いやそれわたしたちも人のこといえませんからー」
つづく!!