螺旋のモノリス~京都湯けむり殺人神父ラヴィニ―のドキ☆釘付け魅惑大胸筋~

小説書きでミニチュアゲーマーが何の生産性もない無益なことばかり延々とくっちゃべってるブログ

皆に畏れられていた。自分にとってもそうだった。

 ――胸板兄貴は。
 ついに来るべき時が来たことを悟った。
 ウィッチ――全滅。
 リーヴァー――全滅(いつものこと)。
 すかさずマリーンのタクティカル・スカッドが迅速に展開し、中央の砲台を制圧する。
「万機神(オムニシア)に幸あれかし! フレイマーは単なる武具以上の尊き存在なれば、お前たちの穢れし魂も遺漏なく清められたであろう!」
 マスター・オヴ・フォージは無骨な汚物消毒器を掲げ、勝ち誇る。
 ――ええい、どうする!
 圧倒的不利。壊滅しかねないほどの。
 胸板兄貴は、カバライト・アーマーに内蔵された無線機を起動し、ヴァトハールに繋いだ。
「おいオッサン!」
『お、お、おち、おちおちおち! おち、おち!!!!』
「アンタが落ち着け!」
『おちん○んびろーん!!』
「こっから狙撃されてえのかテメーは!」
『どうしよう!? 女獄長やられちゃったよ!! ねえどうしよう!! ボクどうすればいいの!? ひ、退く!? 一旦退いとく!? 体勢立て直す系男子!?』
「突っ込みな」
『えっ!?』
「冷静になれよ。その距離はもう、アンタの間合いだ」
 沈黙。さまざまな感情の入り混じったそれ。
『……いいの?』
「アンタの能なんてそれだけだろ。今日こそ見せてもらうぜ……コモラフの殺人芸術、その究極をよ」
『ならば我らが道を開こう』
 QBくんが通信に入ってきた。
『ヴァトハール殿は右脇から戦線を抜け、マスター・オヴ・フォージの首級を挙げられよ!』

「おぉ……」
 QBくんたちが砲台を占拠しているタクティカル・スカッドに突撃。その場に釘付けにする。
 ヴァトハールの前に、道が出来た。
 あまりにか細く、険しく。
 しかし確かに存在する、道。

「よし、俺たちは敵のビークルを片づけるぜ。撃ち方用意!」
「「がってん!」」
 暗黒の閃光が廃墟の窓から降り注ぎ、滑空戦闘車両ランドスピーダーの装甲を貫徹、一撃のもとに破壊!
 カバライトウォリアーの射撃技能は、水準以上のレベルにあるのだ。



 ヴァトハールはギョロちゃんと一緒に戦線を抜け、マスター・オヴ・フォージに向けて疾走していた。
 だが、
「触れさせんよ!」
 その前に、もう一部隊いたタクティカル・スカッドが素早く割り込んでくる。
 むむ、と立ち止まるヴァトハール。
 すると、横からギョロちゃんが腕を引っ張ってきた。
「ギョロロ?」
「うん?」
 その紅く澄んだ眼が訴えかけていることを、ヴァトハールは過たず理解した。
「アイバーストか! いいね! やろう!」
 ギョロちゃんの必殺技、アイバースト。
 眼から怪光線を放ち、敵を永久に回復不可能な意識障害に陥れる、恐るべき生態能力。
『まて、撃たせるな!』
 瞬間、胸板兄貴の通信が入った。
「えー、なんで」
『距離を見な。突撃するにはすでにギリギリの間合いだ。ここで撃てば、敵を倒した分だけさらに距離が開く。下手すりゃこのターンで白兵戦を仕掛けられなくなるかもしんねえぜ。大人しく全力移動だ』
「うむむ〜」
「ギョロ〜……」

 とは言うものの――
 ヴァトハールは不安であった。
 千七百年前、仄暗き都コモラフに流れ着いた時から、彼は殺人術を磨き続けてきた。
 しかし、それは戦装束を身につけていない相手を効率的に殺傷するための技――いわゆる素肌剣術である。
 重厚な甲冑を身に付けた戦士と、一対多の状況で、果たしてどれほど自らの力が通用するものか――
 その答えは、すぐに現れた。

 胸板兄貴は瞠目した。
 ヴァトハールの姿が、掻き消えたのだ。
 白い閃きが幾重にも弧を描いた――かと思われた瞬間、深紅の花弁が盛大に舞う。ゆっくりとくずおれる三人のスペースマリーンたち。
 屋上から客観的に戦場を俯瞰できる自分ですら、今の太刀筋は見えなかった。斬られた側は何が起こったのかすらわからなかったのではないか。
「なんつー……」
 ――素の攻撃回数が4回。両手武装ボーナスで+1。突撃ボーナスで+1。そしてジンブレイドによる追加攻撃が+2。
 クロスレンジを支配する、怪物。
 ヴァトハールは片膝をついた姿勢でギョロちゃんのそばに出現し、納刀。鍔鳴りの澄んだ音。
 残心の体勢のまま、ふと詩興に駆られたのか、口を開く。
『春休み 行ってみたいな ラスベガス……』
わざわざ無線で聞かせてくんな! カッコよく締めたかったの? ねえ、カッコ良く締めたかったのそれ?」

「なんという一周回ったセンス……かっこいいとはこういうことか……」
 QBくんたちも順調にタクティカル・スカッドを圧倒していた。
「我らは良きあるじに恵まれた! この生に憂いなし!」
 朗々と喜びを詠う。詠いながら、殺戮の円弧を大気に刻む。

 胸板兄貴の部隊も支援射撃を繰り出し、敵ビークル武装を破壊した。
 ――いける!
 一時は全滅をも覚悟したが、なんやかんやで押し返している。
「シャブが切れたァァァァァァァァッッ!!!!」
 横のレイダーの中から、そんな絶叫が聞こえてきた。
 ――あー、そういやコイツがいたな。
「おいチェーン兄貴! あそこの砲台を見な! あそこは吉野家だ! カツ丼も扱ってるレア店舗だぜ!」
「M☆J☆D!?」
 レイダーが急速に上昇し、加速。
 猛烈な勢いで飛び去ってゆくチェーン兄貴たちを見送りながら、アイツ敵味方の区別つくのかなぁ、とか考えていた。



 そして――
 その時が、訪れた。

ヴァトハール「あ」
胸板兄貴「あ」
QBくん「あ」
チェーン兄貴「あぁ、クソが! またチンポジがずれてやがる!!」ゴソゴソ
胸板兄貴「うっせーよお前は!! ちったぁ足並み揃えろよ!!」
ヴァトハール「あ……ああ……」
 ヴァトハールは、カランと音を立てて骨刀を取り落とし、ゆっくりとギョロちゃんに歩み寄った。
「ギョロ……ちゃん……?」
 返事は、ない。
 絶望にも似た沈黙が、その場に降り積もっていた。
 プリプリの新皮質は潰れて飛び散り、手足の末端が断続的に痙攣する他は、何の反応もない。
「ああ……おお……ああ……」
 ヴァトハールの目はどんよりと濁り、外界のあらゆる情報を遮断せんばかりだった。
 膝がくずおれ、力なくうつむく。
 心身喪失。
 戦闘、不能
「脆い心よ……今すぐ同じところに送ってくれよう」
 マスター・オヴ・フォージの号令のもと、サーヴァイタ―たちがヴァトハールを取り囲もうと移動を開始した。



 ぐしゃり。



 何かの、音がして。
「ウヘッ、汚ネッ!」
 サーヴァイタ―たちは、今しがた踏んづけたナニカを落とそうと、足を振った。
 それは。
 鮮やかなピンク色の、それは。
 ――ゆらりと、立ち上がる者がいた。
「フ……クク……」

「あらゆる情は、生を彩る美酒なれば――」

「この憎しみもまた、馥郁たる甘露なり」
 万雷の血散を浴びながら、ヴァトハールは天を振り仰ぐ。
「おぉ――暗き美の神々(ダークミューゼズ)も照覧あれ! 御身らの好まれる悲劇喜劇惨劇歌劇! 私めがしかと演じまする!」
「なんという……!」
 タクティカル・スカッドを敗走させて駆けつけたQBくんたちは、眼を剥いた。
 自らを上回る、剣鬼の咆吼。
 それはまさに、暗き神話の一場面を描いた絵画のごとき光景であった。

チェーン兄貴「そんなことよりカツ丼食べたい!!」
胸板兄貴「不快なまでにフリーダム……!」
 だが、ここでチェーン兄貴が中央の砲台を制圧した意味は大きい。
 クリムゾンフィスト戦団は、すでにここを制圧できる歩兵がいない。
 もはや勝ったも同然であ

 ビルから飛んできたロケット弾がレイダーぶっこわしてチェーン兄貴の部隊がはんぶんいじょうしんだ。

「うむ、まぁ、死んどけ」
 無情の突撃。敵うはずもなくチェーン兄貴死亡。


 かくして、お互いに中央の砲台をゲットする手段がなくなり、勝負はグダグダな引き分けとなったのであった!!

「あ、引き分けみたいッスよ」「え、あぁ、うん」





上「いやーさすが俺。完璧な采配だったな。天才だわ」
左「なんでテメーが仕切ったみたいな感じになってんだよ! テメーは役に立ってねえだろ!!」
右「あうー、火傷ヒリヒリするぅー」


 今月わかったこと。
・汚物消毒器超怖い。
・ヴァトハールさんはやればできる子。
俺、ルール覚えなさすぎ。


 ともあれ、鉄さんありがとうございました!!