黒金の闘士
前回までのあらすじ:『ダークサイダーズ2』が面白すぎて小説執筆ぜんぜん進まなかっ恥部を露出ゥッッ!?(ぼくがかんがえたまったくあたらしいごび)
上「はい、というわけでね、もうかなりザメンホフくんがキレ気味だからね! 襲撃いかないとね!」
左「うん……」
上「……」
左「……」
上「ぜ、前回はけっこうガンバってペイントークン二個も手に入れたからね! 今回もうまくいくといいね!」
左「うん……」
上「……」
左「……」
ともかく、コモラフを出撃して現実宇宙に至った陰謀団〈網膜の恍惚〉であった!!
「やっほー、ジェイドくん。なにしてんのー?」
「ドゥライチか……というかお前か」
その男の口調は、苦々しさ百パーだった。
いつぞや〈網膜の恍惚〉と共闘した、エルダーのアウタルークである。
名を、ジェイドと言う。
「いっやー、前会ったときはすごかったよねー、二人で背中合わせでディーモンどもをバッタバッタと……」
「すがすがしいまでに役に立たなかったよなお前たちは」
「本当のことを言ってはいけない!!」
「しかしエクゾタイトたちの避難はどうにか完了した。そのことについては、まぁ、感謝はしているのだ」
「えへへぇ〜」
頬を押えてクネクネしだすヴァトハール。殺したくなるキモさだった。
「……何故、陽気を装う?」
低く問いかけてくる声に、ヴァトハールは一瞬固まる。
気まずい沈黙。
「……まぁ、いいじゃないか、そんなことは。それより目の前で殺気立ってるこの二人のガ〜イズは一体どうしたのかな?」
ひとりは黝い機動装甲服を纏った〈戦闘者(アデプトゥス・アスタルテス)〉。携えた大剣からは潤みを帯びた紫炎が立ち上り、端正な顔に怒りの陰影を浮かび上がらせていた。
いまひとりは、帝国防衛軍の筆頭異能者だろう。何故かポーズがやたらとサタデーナイトフィーバーだった。本当に何故だ。
〈帝国(インペリウム)〉が誇る、剣と盾。
ジェイドは嘲るように鼻を鳴らす。
「ここは我らが発見し、我らが環境最適化プロセスを遂行した〈乙女の星(メイデンワールド)〉だ。それをこの下等種族どもは、少し目を離した隙に我が物顔で不法に占拠し、倣岸にも都市まで建ておった。実に不届き千番である。どうして人類というやつは最低限の筋道も通せぬ者ばかりなのか……嘆かわしい限りだ」
「あぁー、そういう……」
実に良くある人類とエルダーの対立パターンであった。
「まぁ今までウン十年と住んで来たのに、いきなり出て行けなんていわれても「はぁ?」って感じだろうけど、こっちもほいほい惑星を譲ってやれるほど余裕はないからねぇ……」
ヴァトハールの嘆息に、ジェイドは首を傾げた。
「どこが過大な要求なのだ? たかが百年居付いただけの仮住まいであろうが」
この発言に、人類二人は眼を剥いていきり立つ。
わずか数十年しか生きられない種族の時間感覚を、本当の意味で理解してやれるエルダーは、少ない。たとえ惑星ひとつであろうとも、ちょっと目を離した隙に住み着いた下等種族ごときにくれてやれるほど軽い存在ではないのだ。
ヴァトハールは人類勢に両掌を向けて
「うん、えっと、気持ちはわかるけどさ、人類諸君? ここは穏便に別の居住地を探す方向で手を打つ方がお互い面倒がなくていいんじゃないかなぁーとかね、思うわけですよおっさんは」
「言葉など、無意味」
スペースマリーンは滅紫の大剣を頭上で翻すと、断固たる意志を込めて足元の地面に突き立てた。
エネルギーの粒子が弾け、地面に広がる。
「ここは恐れ多くも皇帝陛下の御光がしろしめす〈帝国〉領である。穢れたる異種族(ゼノ)の脚が触れる余地などどこにもない。即刻立ち去れ」
「ですよねー」
「ふん、言葉で解決できぬ命題のなんと多きことか。気が滅入るわ」
ジェイドは、今や明確な敵となった人類勢力にパワーソードの切っ先を向けた。
「取り消しは聞かんぞ。後悔の暇など与えぬ」
「戦闘後にもう一度言ってみろ。異種族(ゼノ)め」
かくして、会戦が始まった。
ヴァトハール「いやぁ、いくさの前はトイレが近くなるねぇ!!」
ザメンホフ「前回のように漏らさないで下さいよ、頼みますから」
ヴァトハール「いやああああ、バレてりゅぅぅぅぅぅ!?」
ザメンホフ(本当にちびっていたのですか……)
ジェイド「……当然のような顔をして断りもなく我々の横に陣取っているな貴様ら。もういいけど」
こめかみを押さえるジェイド。
ヴァトハール「ところで、あの敵陣奥に二つデンと鎮座ましましているなんかでっかい緑の車両はなんなんだい?」
ザメンホフ「おぉ、あれはバジリスクですね。とりあえず大きな大砲積んどけばいいや的な、優雅さの欠片もない設計思想のもとにでっちあげられたガラクタです」
ヴァトハール「なーんだ、じゃあ別に注意する必要もないね!」
ジェイド「ちなみに搭載されたア式野戦砲の攻は9だ」
ヴァトハール「きゅっ……えっ?」
それは、この銀河に生息する大半の生物が肉片も残さず爆裂四散融解蒸発する威力であった。
ザメンホフ「あと最大有効射程は240mvです」
ヴァトハール「ごめんちょっと君たちが何言ってるのかよくわかんない」
※戦場の端から端まで100mvもない。
ジェイド「あれを喰らうのは絶対に避けたいところだ。速度・機動力に秀でる貴様らは突っ込んでなんとしてもバジリスクを破壊せよ。砲戦力に秀でる我らは後衛から火力支援する」
ザメンホフ「ま、無難なところですね」
というわけで作戦開始。
速攻でチェーン兄貴(inレイダー)と三馬鹿が敵陣近くにまで肉薄。
チェーン兄貴「要するに懐にもぐりこんでブッちめればいいんだろ? マジ余裕だし。あと加速の慣性でチンポジがずれたじゃねーか死ねてめえらマジ殺すぞ」
三馬鹿「あぁ、胸板兄貴がいればツッコんだんだろうなぁ……今」
チェーン兄貴「チンポジは男の最重要懸念事項」
三馬鹿「シャブは?」
チェーン兄貴「人生」
ため息をつく三馬鹿。
三馬鹿「胸板兄貴、どこいっちまったんだろうな……」
そして自分たちには機甲戦力を撃破できる武器が何もないことをすっかり忘れているチェーン兄貴&三馬鹿であった。
――女獄長(inレイダー)は。
なんとなーく、おいてけぼりにされたような感覚を味わっていた。
「みんな、なんかドライですねー」
レイダーの手すりで頬杖つきながら、銃火飛び交う戦場をぼんやり眺めている。
冷たい、とまでは思わないが。
自分の背丈がヴァトハールの膝あたりまでしかなかった頃から、胸板兄貴とは一緒だったので、現状にいまいち対応できないのだ。
そんな女獄長を、ウィッチたちは心配そーに見ている。
「おねーちゃん、元気出して?」
「うん……ありがとー。ともかく前進ですー」
かくして〈網膜の恍惚〉主力は敵陣奥深くへ楔のごとく突入。猛烈な応射が襲い掛かるも、最高速度の回避機動でどうにか致命打は貰わずに1ターン目を生き残った。
だが――
「天を見よ。見えるはずだ。汝らの救済が!!」
ボゴォ!!
ズバンッッ!
ボゴォ!!!!
轟音とともに空を切り裂いて、強襲降下艇ドロップポッドが降り注ぐ。
間髪入れずに開花。現れ出でたるは二機の巨神――ドレッドノート!
後衛で砲戦を敢行していたエルダー軍は、予期せぬ襲撃に浮き足立つ。
あくまでバシリスク撃破を優先するか!? 目の前の脅威を払うか!?
アウタルーク・ジェイドは籠手の中で拳を握りしめた。
その瞬間。
「見上げるのは結構だが、眼が潰れないよう気を付けな……」
戦場全域に、漆黒の羽根が舞い散った。
背徳的なまでに洗練された五つのシルエットが、この世の終わりを告げるように降臨してきた。
三馬鹿『で、出たー! メンナク兄貴の縦深攻撃だー!』
ヴァトハール『メンナク兄貴はこの技で幾多のビークルを撃破する予定なんだ!!』
ずれた。
いやもう、ずれたなんてものではなく、ぜんぜん全く見当違いな所に下りてきた。
そして着地に失敗して一人死んだ。
ヴァトハール『メンナク兄貴ィィィィッッ!?』
「今日は塵風(かぜ)が騒がしい……」
三馬鹿『でもこの風少し泣いてますッッ!!』
万事休すかと思われたが、画面端より続々とエルダー軍の予備戦力が到着してきていた。
「……まぁ、なんだ、我々にも一応備えがないこともないのだ」
『それ先に言ってくんないかなぁ!』
――ともかく、だ。
女獄長は、心機を臨戦させた。
マリーンたちが設営したイージス防衛ラインを突破し、かつてない好条件でこちらのターンが回ってきたのだ。
というか、初めてレイダーがまともに機能したと言っていい。
「よーし、いくよー、みんなー」
「はぁーい!」「やっちゃうぞー!」「おー!」
レイダーの手すりから、十の影が躍り出る。
その影、俊敏にして惨麗。
流れる水のようになめらかな所作で、一瞬にして間合いを侵略。
久しぶりの白兵戦だ。
「うむ……女獄長どのは気丈に頑張っておるようだ」
「やはり天才……」
「しねうんこ」
「エリテマトーデスくんはかしこいな……」
「大した奴だ……」
QBくんたちは、エリテマトーデスくんの後ろに隠れながら、のんびりと進軍している。
耐7を誇るエリテマトーデスくんならば、ア式野戦砲を喰らっても即死はしない。
だから絶対大丈夫だ!! 超安心だ!!
「ぐふぅ、我々ではなく友軍を狙い、その誘爆で攻撃してくるとは……これが、天、さ……」
ア式野戦砲マジ超マジ。
エルダー同盟は、恐慌一歩手前の緊張に包まれていた。
いや、
いやいやいや。
おかしいだろ。
おかしいですやろ。
なにあの威力。
その頃、打ち捨てられた掩蔽壕の後ろに隠れていたヴァトハールとザメンホフ(とメドゥサエコンビ)。
ヴァトハール「……よし!」
何がよし、なのか。
ヴァトハール「逃げよう!!(提案)」
ザメンホフは物も言わずにシリンダーが幾本も突き出た金属製のガントレットでヘタレの顔面を掴んだ。
ヴァトハール「……おーけーザメンホフくん、フレッシュガントレットで顔面鷲掴みにするのやめよう。破裂しちゃうから。僕モヒカンみたいに破裂しちゃうから!! やめて!!!! おねがい!!!!」
ふぅ、とため息を吐くザメンホフ。
――せっかく邪魔者を排除できたかと思えばこのザマですか……
胸板兄貴は〈網膜の恍惚〉を掌握する上で、ほとんど唯一の障害であった。
あとはアホしかいないので、簡単に操れると思ってはいたが……
――無能ばかりではどうしようもありません。
捨てるか、と極論が脳裏をよぎる。〈すべての網膜の終り〉に上納できたペイントークンがたったの二個では、お話にならないにもほどがある。
自分と言う緩衝材を失えば、〈網膜の恍惚〉は即座に潰されるであろうが――まぁ、知ったことではないのだ。どうせこのマダオはなんやかんやでしぶとく生き残るだろうし。
ザメンホフは今や、ヴァトハールたちの利用価値そのものに疑問を抱き始めていた。
深い嘆息を漏らし、ぼんやりと上を見上げる。
と。
「!?」
視線の先に、黒い船影が映っていた。
――レイダー、ですか?
しかしそのカラーリングは、〈網膜の恍惚〉とは明らかに異なるものであった。
「ヴァトハール、私の知らないうちに新メンバーでも迎え入れていたのですか?」
「え? 知らないよ?」
ウソをついているのなら「しししし知らないよマジでマジで!!」みたいなリアクションをするところなので、恐らく本当にわからないのだろう。
してみると?
一体何者か?
黒いレイダーはレトロファイアジェットを吹かして降下、戦場に降りてくる。
エルダー勢の誰もが、謎の闖入者に注目していた。
そして――
みんな眼を見開いた。
ダークライトの閃光が乱舞し、バシリスクを一瞬にして残骸の山と変えさしめたのだ。
それは胸のすくうような光景であった。
(※ダークライトは適切な防護具なしに直視してはいけません)
どうやらこちらに味方してくれるのは間違いないようだったが――
「あっ……(察し)」
横でヴァトハールが何かに気付いたようだった。
女獄長「あっ……(察し)」
女獄長も、なんとなく、わかっていた。
たぶん、ダークエルダーバトルフォースに入ってた〈網膜の恍惚〉最初期メンバーは、みんなわかったんじゃなかろうか。
女獄長「これはあのー、あれじゃないかなー? 天界で修行してきました系のー?」
ウィッチたちは顔を見合わせ、なんとなくはにかんだ笑みを浮かべた。
それは実に二年ぶりの笑顔であった。
唸りを上げて叩き込まれるパワーフィストを華麗なターンでかわすと、手首のスナップを利かせて鞭型アゴナイザーを乱舞させる。紫にぬめる触手のようにのたうちながら、マリーンの骨肉を粉砕!
タクティカルスカッドをあっさりと敗走せしめる。
エルダーのウェイブサーペントも追い付いてきて、防衛ラインごしにデヴァステイタースカッドと激しい砲撃戦を開始。
だがそこへ、背後から女獄長分隊が襲いかかる。
女獄長「つぎいくよー!」
ウィッチたち「はぁーい!」「えへへー」
ノリにノってる女獄長。
いともたやすく殲滅。ウィッチの真価がかなり久方ぶりに発揮されまくる。
だが――〈帝国〉側もまだまだ予備戦力を温存していた。
側面。ありえざる方角からの奇襲。
「ファッッ!?」
ヴァトハールたちの目の前にも出現。
ペナルレギオンが2スカッドに、アサルトマリーンが1スカッド。
「いや、いやいやいやおかしいですやろこれなんで横から来てんのこの人たち、もー、ちょっとォ、もー、ルールブックちゃんと読んでよねもー」
尾骶骨。
「包囲、されていたようですね。戦闘が始まる前の段階で、すでに」
ザメンホフは枯れ枝のような手で自らの顎を掴む。
「あの中隊長……主人公っぽい外見に似合わずかなり食わせ物ではないですか。ふぅむ」
デヴァステイターをも殲滅し終え、ペイントークンを二つも獲得した女獄長。しかしそこは敵残存戦力に四方を囲まれる位置関係でもあった。ドレッドノートが、アーマードセンチネルが、そしてサタデーナイトフィーバーさんが!
降り注ぐ銃弾とサイキックパワーの雨に、次々と倒れてゆくウィッチたち。
「いーやー」
さらに。
戦闘車両プレデターの砲撃によって、謎の援軍である黒きレイダーが撃墜される。
中の搭乗者は一斉に脱出し、ついにその姿が明らかとなった。
そう――
我々は。
我々はこの男たちを知っている!
黒いカバライトアーマーに身を包んだこの男たちのことを!!
――つづ恥部を露出ゥッッ!?
く。