ビビ氏の初期のイロモノぶりを俺は生涯忘れない
「うるせえクソが。殺してやる」血を吐きながら、そいつは凄まじい眼で睥睨してくる。「言い遺すことはあるか? あ?」そう語り掛けてから、ヴォルダガッダは己を訝しむ。
いつもは何も言わず粛々とブチ殺すだけである。なぜこんなことを聞いたのか、とっさに自覚できなかった。「黙れクソが。殺してやる。殺してやるぞ」臓物を溢しながら、そいつは力の限り立ち上がろうとしていた。
だが――力がもう入らない。血を流し過ぎた。その紅玉の瞳に讃えられた闘志と殺意だけは、いささかも揺らいではいない。――あぁ。俺は。
久々に、楽しかったんだな。
まだ俺が楽しめることが、この世界には残ってるんだな。
かつてヴォルダガッダが幼生体(ゴブリン)だったころ、世界は脅威と未知で満ちていた。
あのころの気持ちを、本当に久しぶりに思い出させてもらった。
こいつは強かった。頭もキレる。気骨も大したもんだ。「ふぅん」なにか言葉をかけようかとも思ったが、これまで他者を褒めたことなど一度もなく、「褒める」という考え方すら理解していなかったので、何も言わず斧の柄頭で奴の顎を横に張り飛ばした。
頭蓋が回転し、脳が揺さぶられ、下克上野郎はゆっくりと崩れ落ち、昏倒した。
まろび出た内臓を雑に体内に押し込み、汚れた布できつく縛り上げた。他のヒョロカスザコ種族と違って、オークならばこの程度の処置でも一命は取り留めるだろう。「腕を磨きな。いつかまた俺を殺しに来い」聞こえているはずもないだろうがそう言い捨て、ヴォルダガッダは踵を返した。
今度はもっと楽しませてくれることを、心から渇望し。
だが――その願いは叶わなかった。
何年か後、下克上野郎はどこか別の部族の大族長(ウォーボス)となり――崖から落ちて死んだ。
どいつのせいでもなく、キノコ酒で酔っ払ったあげくの不注意であったという。
その事実を知ったとき、ヴォルダガッダは石の盃を握り潰し、ちょうど足元をウロチョロしていたゴブリンを蹴り殺した。
そんであのー、なんか今日またしても「文体が個性的ですね」と褒められて、いや嬉しくはあったんだけど、俺は平易な文章を心掛けてきたつもりだったので、いろんな人から個性的と言われると「マジで?」みたいな気持ちになる。個性的=読みづらい、という観念があるのだ。文体で個性なんか出そうとするやつは腰抜けである。内容で個性を出せ。で、そう考えてツイッターアーでアンケートを取ってみた結果、今のところ「俺の文体は個性的」な投票が優勢な感じだ。なんてことだ。平易な文章こそ至高だというのに、俺はそれを実行できていないのである。しかし、個性とはなんだ? 読者諸氏は俺の文章の何をもって「個性的」と感じているのか? 今まで自分の文章を平易だと思っていた人間に、この答えを出すことは不可能である。指摘されないとわからないのだ。誰か、どうか、教えてほしい。俺は文体の個性など潰したいのだ。で、えー、『ワンピース』、アラバスタ編を読了する。面白かった。……面白かった。えー、えー、面白かった。終わり。おいやめろよ……もうちょっとなんかあるだろお前……。個性的な褒め褒めをしたいのだが、俺にはそれをやる才能がマジでまったくない。まぁ、言うことが思いつかないというのは、それだけ穴がないストーリーだったとも言える。言えるがしかし、そんな感想が面白いわけがないのである。
時間切れ。
(ところでブレットって突進技だったのだろうか。自分が超速で突進しながらピストル撃つことで、二段の加速が乗って強烈な一撃になる的な技なのだろうか)