螺旋のモノリス~京都湯けむり殺人神父ラヴィニ―のドキ☆釘付け魅惑大胸筋~

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ケイネス先生の聖杯戦争第四十一局面

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 ――信頼を、頂いた。ディルムッドは、己の腕に宿る残り三画の令呪が燃え上がるような感覚を抱いた。誉れある、その輝き。騎士として、武人として、主君にそこまで信任を賜った事実を、魔貌のサーヴァントは万感の思いで噛みしめた。聖杯戦争史上、ここまでマスターから全幅の信頼を得たサーヴァントは他にいるまい。ケイネスの人品、思いは、ディルムッドには計り知れないところがあり、またその冷酷な術策の数々には、いささか反感を覚えたことがないとは言わない。だが――ケイネス・エルメロイ・アーチボルトを主に頂かなくば、騎士王アルトリアや征服王イスカンダルなどの威明轟き渡る大英雄たちに勝利の凱歌を上げる栄誉を得ることもなく、そしてランスロットという奇妙な友と出会うこともなかっただろう。ケイネスへの思いは、忠誠と敬意だけではなかったことは事実だが、しかし彼は彼なりにディルムッドに対して配慮を払っていたこともまた理解していた。本来ならば、ライダーを味方につけるために征服王に臣下の礼をとることを強制できたはずなのだ。だが――彼はそれはしなかった。それはディルムッドの根本を否定する命令であり、さすがにそればかりは抗命するよりほかにないと覚悟を決めていた。だが、ケイネスどのはそうなさらなかった。このせいでライダーと敵対し、アーチャー戦に向けて万金よりも価値のある令呪を手放すという苦渋の選択を取らざるを得なくなることは予測できたであろうに。無論、令呪をもって強制させた場合、ディルムッドは全霊をもって抗った。それは基礎能力値のダウンという形でのしかかり、聖杯獲得への道が遥かに遠のく結果をもたらしたであろう。それゆえの最適解。彼らしい冷徹な判断力だ。しかし、彼の心算はどうあれ、こちらの人品を慮って手心を加えていただいたことに変わりはない。それは、身命を賭してでもお返しすべき大恩である。さらに言うならライダーのマスターはヘタイロイ展開の前に舞弥どのの狙撃で片づけるのが最上であったはずである。それをせず、あくまでこの双槍に任せて頂いた。こちらが許容できるギリギリのラインを的確に見抜き、そのうえで勝つための最善を尽くされたのだ。気にかけて頂いた。歩み寄って頂いた。それに比べて、自分はどうであったろうか。魔術師という、ケイネスどのの立場と思考について、理解し、歩み寄ろうと努めていただろうか。それを考えると、ディルムッドの胸には申し訳ないという気持ちばかりが溢れてくる。この信任はディルムッドの魂に救いをもたらした。彼にとっての「真実のとき」は、まさしく今だった。――残り令呪は三画。一画は心眼スキルを五分間ランクアップさせる用途で使い、宝具斉射の超絶的回避を可能とした。もう一画は言わずもがな、空間転移して英雄王の対界宝具を回避し、その背後に回り込むために用いた。我が忠誠に一片の曇りなし! 百段の刺突をもって攻めたてるも、ギルガメッシュの円盤宝具は完璧に対応してくる。さらに一画を使用。敏捷性をEXランクに昇華させる。もはや音速など止まって見えるほどの魔速。――この身に宿れる主の信頼の証をもって、英雄王、今こそ貴様を討つ!