螺旋のモノリス~京都湯けむり殺人神父ラヴィニ―のドキ☆釘付け魅惑大胸筋~

小説書きでミニチュアゲーマーが何の生産性もない無益なことばかり延々とくっちゃべってるブログ

殺伐とした話や鬱話に疲れた人へ

「お前らも無闇にやさしい気分になればいいじゃない!!」
(星虫/岩本隆雄
突如宇宙から降ってきた小さな宝石みたいなものが全人類の額に吸着して大騒ぎになる。星虫と呼ばれたそれらは、高校生・氷室友美の額にも取り付き、やがて驚くべき変異を遂げてゆく。そんなSF。星虫には宿主の五感を増幅する生体機能があるのだが、その増幅された知覚が高じ、登場人物たちは思いがけないものを認識することになる。こういう知覚加速系SF(そんなジャンルあるのか知らないけど)が私は大好きなのである。五感という、ものすごくありふれた、自身の一部とさえ言ってもよいものが組み合わさって、想像だにしなかった〝何か〟を浮き彫りにするという「地続き感」に、ものすごいセンスオブワンダーを感じるのだ。環境破壊を繰り返す人類の、地球側から見た存在意義が大きなテーマになっているのだけど、単に「人間は地球の癌だ!」とは言わないのが新鮮でよかった。星虫の正体はなんだったのか? 人類の正体はなんだったのか? 作中で明かされるそれらの答えは、もちろん現実にはありえないのだけど、そうであってもおかしくないかもなぁと思える説得力がある。全体的な感想としては、美しい話だったとだけしか言えない。星虫はそのままため息が出るほど美しいし、宿主の感覚を増幅させる星虫の眼から見た世界も美しく、星虫を危険視する社会と戦う登場人物たちも美しい。特に胸の透くようなクライマックスの美しさは、思わず何の関係もない私まで明日を前向きに生きる決意を新たにさせてしまうほどのものだった。これ以上ないハッピーエンドで、別に悲劇でもなんでもないのに、涙ぐんでしまうのだ。自然は、地球は、宇宙は、厳しく無慈悲なばかりではなく、涙が出てくるほど優しい面もある――そういう作者の世界観が爽やかに胸にしみてゆく。イヨーシ、俺も明日から一生懸命生きるぞー!(具体的には何も決めない)