意訳:ネタがねえ
ハードディスクに眠っていたなんだかよくわからない冒頭シリーズ。
タイトル『砂糖の海で、タナトスは呻く』
最初はただのオンラインウォーゲームであった――らしい。
だが、発売されたその日にラスボスの攻略法がネットで論じられることすら珍しくないこのご時世において、その異様さと違法さが周知のものとなるのに、それほど時間はかからなかった。
開発メーカーはこの件に関して徹底的に無罪を主張しつづけ、それが司法サイドから認められるのも即時であったという。
実際問題、不可能なのだ。
広すぎる。緻密すぎる。
地球の総面積よりも広大なオープンワールドなど、どうあがいても製作できるはずがないのだ。
世界のすべてのハードウェアを接続して並列処理させたとして、ゲーム内時間を一秒進めるのに数千年かかるであろう。
量子コンピュータが実用化されても動かせるかどうか。
不可能な事柄に対して、罪を問うことなどできようはずがなかった。
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拝啓、父上様、母上様。
桜の新芽が眩い季節となってまいりました。
あなたたちの息子は、私立モヒカン学院高等学校での一年課程を無事、修了いたしました。
入学当初は、周囲の同級生たちのあまりの棘ショルダーアーマーぶりにおののき、「もはやこれまで、先立つ不孝をお許しください」などと惰弱なことを手紙に書いてしまったものですが、付き合ってみれば存外に憎めない、いい奴らです。たまに近隣の村へ略奪を働きにいったりしますけど。
いったい俺はこの話をどうしたかったんだ。
本日の執筆記録:二十六行。