ティッシュを鼻に突っ込みながら
風に揺れるさらさらの短い黒髪(シュヴァルツ)/黒い切れ長の目/乳性石鹸のような白い肌。
隊の広報部より支給された、下着が見えそで見えない黒いミニスカとキャミ/すらりとした脚に黒いピンストライプのガータータイツ/丸い爪先(バルーントゥ)の黒いエナメル靴――愛らしさと唯我独尊のトイプードルの風情。
(中略)
青空へ――ミニスカが翻り、黒いローライズボトムの下着が出現。
『D=(ハートマーク)MPB』――″あなたのために(ハート)ミネオポリス憲兵大隊(ポリツァイバタリオン)″と、愛らしいお尻を覆う布地に白抜きプリントされた広報部特製の下着もあらわに、黒犬(シュヴァルツ)=涼月は、ミネオポリス第二十一区(フロリズドルフ)にひしめくビルの壁を次々に蹴り、銃弾のように跳躍していった。
『オレインシュピーゲル』の主人公の一人、涼月はんの描写である。正直に言おう、我が生涯で触れた中で最も衝撃的な美少女の外見描写であった。なんだこれは。この、この、可愛らしさとエロさと倒錯感と不健全さと見抜かれているという衝撃及び罪悪感と、そして作中社会の歪みすらも感じさせる、この描写。なんつう、なんつう恐ろしい組織なんやミネオポリス憲兵大隊……! これだけで世界設定の表現にもなっているという恐ろしさ。鼻血を噴きつつも慄然とせずにはいられない。美少女の下着のケツにキャッチコピーを載せるという悪魔の発想に、それをまったく動じもせずに着ている涼月はんのキャラクター性、どちらも『シュピーゲル』シリーズ入門者の脳天に衝撃を叩き込まずにはいないことであろう。なんちゅう恐るべき天才なんや冲方先生は……! つうわけで、今日『オレインシュピーゲル』と『スプライトシュピーゲル』を読破した俺であった。あー、疲れた。『オレイン』と『スプライト』は、完全に同じ時系列の作品であり、どちらがどちらの続編というわけでもなく、
時間切れ。
(同じ事件を異なる二つの治安組織の視点から描いていく感じなのであるが、『テスタメントシュピーゲル』は前二作のその後を描く完結編である。果たして特攻児童たちの運命やいかに)