螺旋のモノリス~京都湯けむり殺人神父ラヴィニ―のドキ☆釘付け魅惑大胸筋~

小説書きでミニチュアゲーマーが何の生産性もない無益なことばかり延々とくっちゃべってるブログ

そしてヒロインたちの描写はさらに衝撃的である


 あと特筆しておきたいのが、人物描写の巧みさである。冲方作品は常にこれがヤバイ級なのであるが、『シュピーゲル』シリーズは特にビジュアルイメージを喚起しやすい。

 男――痩躯/黒ずくめのスーツ/細長い指にグラス=血のような赤ワイン。眼鏡の奥で光る神経過敏気味の目=獰猛な知性・静かな凶暴性――人間大の黒いカマキリの雰囲気。

 とか。

 フランス人とオーストリア人のハーフ/丸太を削ったような逞しい体/短い金髪/静かな茶色の瞳/左眉に傷痕――優秀な射手というより、標的にされ続けながらも生き抜いたタフな大角鹿といった風情。

 とか。

 初老の男――司祭服/見事な白髪/灰色の目/深い皺/厳冬に佇つ老オークの樹の風情=揺るぎなく/動じない。

 とか。
 人物の経歴やプライベートまで想像できそうな巧みさだ。そしてこの奇妙なリズム感。たぶんこれ、合う合わないが如実にでそう気がするが、俺はめっちゃ好き。そして――これらの描写の特色として、その人物が登場するたびに名刺めいてほぼ同じ文面の描写が入るのである。登場するごとに意図するものは同じにせよ、その都度新たに文章表現を捻り出そうとしてきた俺にとっては、なんだか革新的なものを感じた。これらの定型文が入るだけで、「あぁ、あいつね」と一瞬で把握可能なのである。本シリーズは登場人物が非常に多い上に濃く、並の書き手では「こいつダレだっけ」が頻発してしまうものだが、さすがの冲方先生である。さすウブ。これは効率の面でも非常に有用な手法である。

 時間切れ。

(しかしエゴンはんは最初強敵めいた立ち位置なのかと思ったらすっかり驚き役になっちゃってまぁ……)