ケイネス先生の聖杯戦争第三十九局面
そして――アーチャーは勝利を確信した。エヌマエリシュが薙ぎ払った後には、サーヴァントの気配が完全に消滅していたからだ。当然である。乖離剣の真名開放に耐えられる者など存在しない。ましてや何ら防御宝具など持っていない、耐久力に欠ける槍兵など一瞬で蒸発だ。跡形も残らない。ゆえに――ギルガメッシュ自身は、続く事態にまったく反応できなかった。にもかかわらず命があったのは、彼を全自動で護衛する円盤型の防御宝具のおかげであった。背後で鋼の悲鳴が響き渡る。唐突に復活するサーヴァントの気配。驚愕とともに後ろを振り向くと、そこには青き槍兵が無傷のまま至近距離にいた。だからなんなんだよ! さっきから何が起こっている!! 一瞬にして背後に回り込んだとでも? そんなことは不可能だ。確かにギルは白兵戦に秀でるサーヴァントではないが、さすがにあの距離で残像すら捉えられぬほどの超高速移動などありえない。動体視力とて常人の域ではないのだ。であるならば――霊体化して難を逃れた?
時間切れ。
(メタ視点からの考察だが、それもありえない。そんなことができるのなら、霊体化による攻撃回避は聖杯戦争においてもっと遥かに濫用されてなくてはおかしい。「見えなくなる」「重力に囚われなくなる」の二点を除けば、実は当たり判定は元のまま残っているのではあるまいか。そうとでも考えなければ大仰な予備動作の入る必殺技型宝具が完全に死にスキルになってしまう)