なお、魔王を活躍させる気はない模様
どうしてヤビソーが自らの腹を掻っ捌いたのか、ひとかけらも理解できなかった。『何を……何してやがんだテメェエエエエエエエエッ!!』駆け寄る。罠かも、などとは考えなかった。そのような余裕はなかった。
命は尊いものである。ヴォルダガッダはその価値を最大限認めている。
奪うものに価値がなくば、意味がない。それは空しいばかりだ。だから一個のオークとして生きていた頃の自分は常に満たされることがなかった。価値を認めなかったから。
だが、今は、違う。――テメーの人生だから叩き潰したいのだ! テメーの可能性だから奪いたいのだ! テメーの運命だから踏みにじりたいのだ!なのに。なのに。『フザけるなよ……命を、なんだと思ってやがんだ……ッッ!!』早く。速く。迅く。疾く。
見る間に、ヤビソーの腹部より大量の血が流れ出て、膝をしとどに濡らしてゆく。
俯いた上半身がゆっくりと起き上がる。腸が腹圧でまろび出てくるさまが見て取れた。『ダメだッ!!』テメーの命を奪っていいのはオレだけだ。
よしんばそうでなくとも、殺し合いの果てに喪われなくてはならない。
テメーは、一体、なんのために強くなったんだ。ヒョロカスの分際で、どうしてそこまで殺しの技を磨いた。
譲れないものがあったんじゃないのか。どうしても守りたかったんじゃないのか。
その想いの欠片、煌めくひとつひとつを、ヴォルダガッダは尊敬していたのに。『戦って、死ぬためじゃねえのかよォッッ!!』一刻の猶予もなかった。ヤビソーの命が、くだらない自殺なんかで潰える前に。
花が、散ってしまわないうちに。
せめて、美しいままで。――鏖義・開眼――その瞬間、ヴォルダガッダはすべてを悟った。生きる意味も、死ぬ価値も、自分のすべてはこのためにあったのだと、静かな納得が広がった。無意識の中で出来上がっていたものが、敵手の自殺という最大の冒涜を前に、今ようやくはっきりと意識の上で理解された。『――青らむ天のうつろのなかへ かなたのやうにつきすすみ――』今ならわかるから。
ヤビソーから、学んだから。
生きとし生けるものの、尊厳を守る。
無常のさだめに囚われたテメーを、救う。
オレの手で。テメーを永遠にする。
そのために。ただそのためだけに、オレは生まれてきたんだよ。
存在の、固定。――存在が存在するために必要なものは何か。それは、二つの幅である。
時間という幅と、空間という幅だ。
このどちらかが欠けたとき、存在は存在することをやめる。『――すべて水いろの哀愁を焚き さびしい反照の偏光を截(き)れ――』縁起。無我。あるいは因果律。あるいは刹那(じかん)と極微(くうかん)の相互交換可能性。
一秒という時間の中に、この宇宙すべてが存在している。
一時間という中にも、この宇宙すべてが存在している。
百年、一万年であろうと同様だ。
どのような長さの時間の中にも、同じ大きさの宇宙が存在している。
また同様に、爪の先ほどのわずかな空間の中にも、この世界すべてを包む空間の中にも、等しい量の時間が内在しているのだ。『――日輪青くかげろへば 修羅は樹林に交響し――』一見して等価交換則が成り立っていないにも関わらず、この宇宙は破綻しない。それは何故か。
今ならわかる。
「原因」と「結果」の区別のようなものだ。物事をこの二つに分ける考え方はわかりやすいが、一部に欺瞞を孕んでいる。
ある「結果」が、次の何かの「原因」となるように、この世に「結果でしかないもの」や「原因でしかないもの」は存在しないのだ。
「時間」と「空間」の関係も、これに近い。
あるとき不意に、書けるようになる。なんか、ヴォルを負かすまでの筋道が立った。で、あのー、あれだ、セプクすると、ふざけんなテメェってなって、普通なら回避不能なタイミングで使われるはずだったヴォルの対人宝具が、機を逸し、そこに総十郎が漬け込む的な? そうゆう流れにしよう。で、ヴォルのヒサツ・ワザは何日か前に言及したやつで一応行くとして、総十郎の対抗必殺技は、あのー、「木侮金の理」とかゆってたやん? あれから着想して、ええと、血を撒き散らすことで田んぼの豊穣を祈願する呪術ってものがリアルに存在するわけだが、それをアレして、総十郎の血が汚染幽骨を撒き散らされ、なんやかんや良い感じにして森の意志の本当の理を局所的に復活させ、なんかこう、「木侮金」の型にハメて殺す的な? そうゆうのを考えておる。もうここまで構想したらあとは一気に書くだけだ!!!! と普通の小説ならなるところだが、俺だからなぁ……なんか「もっといい表現があるのではないか」とか言って悩みそうなんだよなぁ……
時間切れ。
(いやもうここまで来たら「あと少しだけ……っ! もってくれくれ……っ! 俺の体……っ!」補正が働いて一気に書きませんか? おん? もう終わろう? 次の作品行こう? な?)