ケイネス先生の聖杯戦争第九局面
少しばかり余談である。この同盟構築によって、ディルムッドとランスロットは以降肩を並べて戦うことになるのだが、この両名、驚くほど境遇が似ている。ともに騎士の道に生き、ともに仲間内で最強の戦士であり、ともに主君の嫁を心ならずとも奪っている。これはもう両者の間になんらかのシンパシーは芽生えてもおかしくなかろう。しかし、その境遇に対して抱いた思いは真逆と言ってもいい。もういちど生を繰り返してでも騎士として生きたかった(つまり本心の根っこではグラニアよりも騎士道を重く見ていた)ディルムッドに対し、騎士でさえなければ惚れた女を救えたかもしれないのにと慟哭するランスロット。そして浅ましき獣となり果ててまで憎しみに身をまかせたかったこの悲憤の騎士を見る時、ディルムッドは何を思うのか。そこまでして手にかけたかったセイバーを、ほかならぬ自分が横取りしてしまったことを、どう思うのか。この二人の男のドラマもまた、見て見たかったものである。さて、これから二つ、やるべきことがある。まず郊外のアインツベルンの城
時間切れ。
(あるいはこの出会いは、ディルムッドをまったく新たな悟りに至らせる契機となりえるかもしれない)