そしてまた落ちる

　その首をへし折ろうと、鉤状に強張らせた五指を少年に伸ばす――が、思わず動きを止めた。

　少年が、柳眉を逆立てたまま、泣いていたから。その凄愴なまでの涙を、どういうわけか無視できなかったから。

「まだ[語り合えるのに]。[笑い合えるのに]。時間制限つきだけど、[触れ合えるのに]……！　まだ失ってないのに……！」

　真っ赤に泣き腫らしながら、炯と見据えてくるその目。

 　でな、思ったんや、第三の敵役の改心にどんでん返しを使うだか何だか言うてたやん？　せやけどな、使う小道具が違うだけで、作劇の構造的にはフィン少年の人格改変フェイズと何も変わんないよねこれって思った。読者からすれば「え、またっすか？」ってなんじゃねえのこれ。いや、まぁ、正直こんな終盤まで読んでくれた読者は多少既視感があろうと最後まで読んではくれるだろうけど、いやそういうことじゃないだろう！！！！　最高を目指さなくてどうするの！！！！　だがしかし、そんなお前、人ってそんな簡単に変わるわけないやろ。したらお前、前提を変えるしかないやろ。したらお前、どんでん返し入れるしかないやろ。したらお前、こういうことになるしかないやろと。そこで俺氏、もうひとつ案を思いつく。すでに心情的にはかなり改心寄りにはなっている。ここで決定打となるべききっかけを、俺はどんでん返しに求めていたが、そうではなく、現在の状況の変化によって第三の敵役の改心が成るというのはどうであろうか。その変化を担うのは……最強オークさんしかあるまいて。奴にも相応しい最期というものをあたえてやらねばなるまいて。あんなにカッコいいんだからな！！！！　それで、あれがああなって、こうなって、ああなるわけだよ！！！！！！

　時間切れ。

（しかしその案だと、改心にシャーリィ殿下が噛めないという問題が出てくる。ううううううどうすればいいんだ。やはりどんでん返しプランしかないのか。うぐぐぐぐぐぐぐぐぐ）