ギャグ考
たとえばアレだ。
「よーし、えぐちさくら」
烈火は野性的な相好を崩し、笑顔を見せた!
さすが主人公! 泣いてる迷子に救いの手を差し伸べる! すさんだ現代社会でも優しさを忘れない人間の鑑だ!
烈火はそのまま最高にいい笑顔で言った!「俺は天才だァーッ!」
いや聞いてねえ!
唐突に何言ってんだこの男!
こことかな。まぁ黒神烈火が登場して最初のボケをかます超重要な、いわゆるつかみの部分だよ。これは言うまでもなく『北斗の拳』の敵役の一人アミバ様のネタであるわけだが、いや今「言うまでもなく」とか言ったけど言うまでもあるわ。アミバ様が人類の共通語になりえた時代はもう終わってるのよ!!!! 普通の人間は『北斗の拳』を「なんか眉毛の太い奴がいろいろ戦う漫画」ぐらいの認識しかしてねえんだよ!!!! その中の、敵の一人の口癖をいきなりパロられてもわかんねえんだよ!!!! ていうか下手するとアミバ様知ってても、これだとわからない可能性濃厚だよ!!!! いきなりすぎるもん!!!!
そこで、もう一つ例を出す。
「面妖な……何者だ! 名を名乗れ!」
「ゾンネルダークですか?」
いや聞かれても。
バス停一部、ゾンネルダーク氏のつかみである。こちらは我ながら秀逸だと思うのだ。烈火のつかみとゾンちゃんのつかみ、どこで差がついたのか。慢心……環境の違い……というよりもあのー、あれだ、「ゾンネルダークですか?」はおかしいんだけど意味不明じゃないんだよ。「なんでお前が聞いてんだよ」って言うおかしいポイントが読者に一発で伝わるのだ。
一方「俺は天才だァーッ!」は意味不明なんだよ。アミバ様知ってても、そこでそれは会話の流れとしておかしいだろと。つまりギャグとは、おかしいんだけど意味不明じゃないことが求められるのではないのかなと思いました(作文)。